長期メンテナンスアグリーメント価格設定

長期メンテナンスアグリーメント価格設定 (MRO)


著者Simon Schalit, 2015年1月

企業が、発電所や、重機産業、航空機・自動車業界での委託事業を行う際、数十年とは言わずも数年に渡り、投資に対する収益獲得が期待されます。リターン・オン・インベストメントを確保するためには、該当機器の長期的メンテナンスおよびサービシングが不可欠であり、事業経費の中の大部分を占めます。このリスクをカバーするため、ベンダー側(OEM、MRO他)の提案する長期的メンテナンス/サービスアグリーメントへの依存は今や常識となっています。

このような契約には数種の形式が存在します。しかし本質的な部分は変わりません: メンテナンスにおける財政リスクは、契約開始時に設けられた金額設定と対象期間(何年もしくは何十年)に渡り、完全もしくは部分的にベンダーへと移行されます。ここで問題となるのは: これら両者間で、どちらがより的確にリスクの測定を行い、交渉において優位に立つことができるかというところにあります。またベンダーにとっては、契約期間内にマージンの最適化をどのように図るかというところにあります。

プリセールスリスクを測定しリスクを生き抜く

長期維持契約の財政的重要性、またベンダー側が、維持契約によるマージン発生に依存することで、機器自体を大幅割引で販売する事実が稀でないことを考慮すると、サービシングの価格設定と条件は両者間での交渉の最重要点となります。

企業は予想されるメンテナンス経費(代替パーツの費用、各作業に対する雇用、サービス中断の際の経費)の測定に多様なツールやプロセスを利用しています。見積もりは複雑であるものの、問題点の指摘を行うことにもなります。本当のチャレンジとは: これらの経費がかかるシナリオがどの確率で発生し、また長期間にどのくらい頻繁に起こるかということです。ベンダー側がリスクを過少評価しすぎたために、契約期間内に赤字をかかえる可能性があります。その一方、ベンダーがリスクを過大評価しすぎたために、サービス提供が高額になりすぎ、契約自体を失う可能性もありえます。

長期契約の実情として、最終経費が非常に不確かである故に、大幅にずれが出る可能性がある事実があります。“現実に近い”もしくは “正確な” 値を算出しようという試みは、予測プロセスに対する誤った見方を反映しています。“単一の正確な値”というものは存在せず;算出されたいかなる値もリスクを抱えており、ドルで表出される(財政的)リスクの測定が予測プロセスの核であるべきなのです。

メンテナンスアグリーメントの契約の成立後、ベンダーはリスクとその結果を背負うこととなります。しかしそれは予測プロセスの終末を意味するわけではありません。逆に、リスク予測を規則的に更新することで、契約の実現性を確保することに必要不可欠なのです。以下のプロセスに関連します:

  • リソース(スペアパーツの在庫や雇用)の最適化のため、の的確なレスポンスタイムとサービスレベルの短期予測を継続することが必要となります。この予測は“プロセスホライズン”(リードタイム)に焦点をおくという意味で短期的です。

  • 契約期間内に企業によりもたらされるリスクを測定し、損失につながるケースを考慮した損出の算出を可能にする長期予測。長期契約の危険は、収益は契約期間全般において認識されるものの、費用の発生は契約の終了直前に集中するところにあります。

メンテナンス予測の従来型アプローチの問題点

リスクやそれに伴う費用の測定は困難であり、不運にも、問題に直面した企業に最もよく使用されるのがこの従来型アプローチなのです。

メーカー(例・MTBUR データ)提供の、実情を反映していない情報に依存した簡素なアプローチは、しばしば他の要因(使用、環境)の制約を受けます。当社の経験では、とりわけ長期間の場合、現実パターンは理論的数値とは関連性を持ちません。

高度な、統計を用いた“従来型”予測アプローチ もスペアパーツに関連する現実パターンを把握しかねます。このアプローチは、メンテナンス予測は他の“需要”予測などに類似しているため同一アプローチを使用可能であるという見地に基づいています。そしてそれは現状から懸け離れています。以下の特徴がメンテナンス予測を困難にします:

  • 稀なケース: 機械故障は稀であるため、パーツに特化した場合、(小売業トップセラーに使用されるような)“スムーズな” パターン提供するモデルに依存することは実践的でありません。

  • 代替品の必要性の波:メンテナンスの現状として、サービスの 中断はパーツの欠陥よりさらにコストが高いことがあります。これは、不必要なダウンタイムを回避するためその都度代替品を発注せず、波形式に集中した時期を選びパーツの代替品発注を行うことの重要性を示しています。これは、異なるパーツが“独立した”メンテナンスパターンを持つ、という見方の不適正を示しています(にもかかわらず、最も頻繁に利用される予測モデルはこの見地に基づいています。)。

  • 非常に高いサービスレベルの要求: サービス中断のコストを考慮すると、他の産業に比べ、メンテナンス契約において求められるサービスレベルは非常に高くなります。例えば、航空機(AOG 事故) によるコストは一日で何十万ドルまでに及ぶことがあります。

  • クローズループ修理サイクル: 多くのパーツは破棄するには高価です。パーツによっては、チェック修理され、将来の使用のため在庫に返還されることがあります。これは、伝統的な“販売、発注” モデルに沿いません。パーツ購入後に、在庫に長期間保存され続ける可能性があります。この現状が、長期的に影響を与えるため、在庫増加のための購入注文をより難しくします。

しかし、最も困難なチャレンジは従来の予測概念自体に起因します。定義としては、予測は、正確さに関わらず、確定でもなく推測でもありません。単に、算出された需要/コストの予測中央値にすぎません。このような場合、メンテナンス契約の全体費用の見積もりされた値は、実際にかかる費用より50%以上、未満の可能性があることになります。必然的に、財政的見地からは、従来的予測概念自体と関連性がなく、不適正でありことを示します。究極的には、的確な予測を実行する鍵となるのは、予測過程において財政的見地を適応することとなります。

予測において、財政要素(財政リスク、サービスレベル)のターゲット、財政的基礎力を念頭に入れた“予想シナリオ”を作成することにあります。それがクオンタイル予測です。

Lokadからのアドバイス: 安全バッファ(在庫関連では、“安全在庫”と呼ばれることが多い)を追加することで、従来型需要予測をコストカバーに転換しようとするのはクオンタイル予測にとって非常に不適切なアプローチです。

予測に関する財政面からの見方: クオンタイル

メンテナンス予測において最重要となるのが、契約全般における財政リスクおよび、目指すカバー/サービスレベルを維持しながらメンテナンスプロセスの矮小化を図る、コストの最適化です。必要とされるコスト/在庫水準の見積もりが高ければ高いほど、現実に押し倒される可能性は低くなります。しかし予測が100%確証を持ったものになることは不可能という事実を念頭に置く必要があります。

これらシナリオはクオンタイル予測を介して作成されたものであり、事実上、従来型予測の延長です: 将来の需要/コストを50%カバーする値を算出するのでなく、クオンタイル予測はコスト/リスク分数内で、10%,60%,80% もしくは 98%であろうとも、閾値を定義します。

全体コストとリスクの見積もり

企業の許容可能なリスクレベルに応じた予測を算出することを目的としています。このデータ分析はシュミレートされたシナリオの形式をとり、最低値、交渉不能なフロアプライス(最低価格)からより高額な価格設定のシナリオを含みます。

事実、メンテナンス契約の価格設定は、少なからずとも、顧客の“支払い意欲” と競争のレベルに依存します。故に、ベンダーは価格設定の調整を余儀なくされるのですが、上記のようなシナリオを使用することで、一定の価格レベルにおいて直面するリスクを数値化することが可能になります。

これらシナリオは期間内に、契約の残り期間におけるリスクを測定する際に更新を行うと、特に有用であり、割り当ての作成、調整の必要性やその程度を定義します。このアプローチはリスクの数量化を提供する上で非常に便利であり、直接的に財政見積もりを行い、また、適合すべきプルーデンスレベルのコントロールを可能にします。

契約内のメンテナンスプロセスの最適化

リソース/在庫水準の最適化には、ターゲットとするサービスレベルを設定し、サービスレベルを維持しながら、それに該当するリソース/在庫水準の矮小化を図るために、最低限のレベルを算出することが理想的です。上記のメンテナンス契約の特徴により、これは難しいプロセスではあるものの、上のシナリオ同様に、クオンタイル予測を実行することで、希望のサービスレベルに対応する需要を数値評価が可能です。

しかし、メンテナンスの実情は、限られた予算と投資に対するサービスレベルにおける最高水準のROIの確保のために裁定取引を余儀なくされ、より複雑なものです。最適化は、シナリオの全要素(可能なサービスレベルの幅を確保するのに必要なタイプ別パーツ)の結果を含むクオンタイルグリッドにより可能となります。このグリッドを利用することで、予算の制約の下、最も効果的な在庫水準の定義を行うことが可能になります。

Lokadからのアドバイス: 数種のモデルが“Monte-Carlo” 方式に基づいていると言われています。しかし、“モンテカルロ”は統計のマジックワードでなく、モデルの背景にある駆動力の理解不足や適正データ欠如のごまかしにはならないことを企業側は十分認知する必要があります。